07/16/2018 原田マハ「異邦人」
おススメ度★★★★★
アタシ好みの文体でぞっこんハマったよ~~。マハさんだけに(おっとととと
アタシ好みの文体でぞっこんハマったよ~~。マハさんだけに(おっとととと
過去の仕事のせいで本を読めなくなりましたが、本屋めぐりは趣味なのでついつい手にとり「積んどく」が普通のあたし。
でも、本書を手にしたとたん、のめりこむような感覚に溺れました。ひたすら読み、そして満足しました。
それは確かな鑑賞眼との共存。以下ネタバレあります。
京都に、夜、到着したのはこれが初めてだった。春の宵の匂いがした。
書きだしの一行。これだけで私を引きずり込んだ魅惑の文章でしたね。
筆者は京都の春の匂いは、湿った花の香りにも似た、心もとない青さ。だという。
次々と繰り出される魔法のことば。
これから読み進めることに対して震えるくらい心躍るのを意識していました。
そこには原田マハ独特の美術への耽美がぎっしりと詰まっていたのです。
浅葱色、梅鼠・・、着物特有の色表現だったり、排他的と言われる京都のしきたり風土も視点を変えると
しっとりと心に入り込んできたし、絵画の鑑賞説明ときたらまさに絵を見ているかのようなイメージがわきました。
キャストは有吉美術館の一人娘菜穂で福島の原発事故を境に東京から京都へ避難していたという設定。
お腹には夫であるたかむら画廊専務、一輝との子供を宿しています。
書きだしの主語は一輝ではあるけれど、主役は間違いなく菜穂。
菜穂の美術を見抜く感性は両親とは違い、祖父の審美眼を引き継いでいたという。
これはラストの出生の秘密へとつながるのでしたが、この件に関しては違和感なく自然に受け止められるのでした。
それは祖父こそが実の父親だったという驚くような事実。
血は争えないというけれど、祖父の息子(菜穂の養父)は全く美術の目がなかったというのが残念でもあり
だからこそ菜穂の感性の鋭さが生きてくるのでした。
物語を貫く作品にモネの「睡蓮」があります。
シリーズの一つということですが私が知ってるのは1つだけだわ・・あれ?
それを所蔵し朝に夕に自分のモノとしてDNAにすりこませ菜穂の才能を開花させるというエスパー的な小道具使いも良いわ。
この「睡蓮」は後に一樹のたくらみで売却となるわけですが、
嘆く菜穂に面倒をみてくれている鷹野せんという書道の師からもともと「あんさんのモノではない」と説かれるのでした。
絵画を所蔵するというのは一時的に独占できても、それは所有ではなく所蔵である。
永遠に誰のモノにもならないという傑作をこの世に残した画家を称える意味をせんに言わしめたところに
この書の奥深さがあります。
鷹野せんという人物はまさに京都を背負ったようなしとやかな貫録を漂わせてもう一つの柱に感じました。
他者を拒絶する京都の門も鷹野せんのおかげで次々と菜穂の前の扉は開かれてきたのでしたねえ。
そして白根樹との出会い。
青葉の絵に魅了された菜穂は心惹かれていくうちに彼女の描く「睡蓮」の絵に息をのんだという。
二人の交流は不思議な糸をたぐり寄せ、静かに流れていきます。
才能が才能を呼ぶというのはそういうことなのかもしれません。
そして最後に明らかになりますが二人は姉妹だったという運命でした。
この件は、たぶん賛否分かれる結末ではありますけどね。
わがままに育ったお嬢様と表現される菜穂ですが
自分の感性を信じてその一点だけで成長し突き進むのが快哉であり、
更にいうなら羨望でもあるわけです。
美術の感性という才能は努力で手にはいるのか? といったら否。DNAとしか思えないですよね。
その環境で日常を過ごせば少しずつ血肉に取り込まれる可能性はあるでしょうけれど
やはり、生まれ持ったモノが華開くのだと思うのです。
俗物な志村昭山画家と白根樹の悲しい親子や、養母克子と一輝の不埒な関係など
脇をかすめるストーリーはちょっと嘆かわしいものがあるんですね。
だからこそ菜穂の気高さや美術への審美眼という芯を走る構成が光るという技となっています。
美術眼を持つ祖父(=実父)と祇園の芸妓真樹乃の子が菜穂。
画家多川鳳声と真樹乃の子が白根樹。
互いの存在を知らない異父姉妹二人が絵画を通じて惹かれ、出会うのが運命というもの。
裏切りの一輝は菜穂から見限られ、
菜穂は子供を京都で育てる決心をしました。
白根樹とともに。
生まれた子供は女の子。
ゾクゾクとしますね。
この子は白根樹や菜穂の美への探求を受け継いだ凄い子に違いないのです。
二人から英才教育を受けて、どんな鋭い眼を発揮するのでしょうか。
天賦の才能を秘めたこの子を育てる続編をぜひぜひ願います!!
でも、本書を手にしたとたん、のめりこむような感覚に溺れました。ひたすら読み、そして満足しました。
それは確かな鑑賞眼との共存。以下ネタバレあります。
京都に、夜、到着したのはこれが初めてだった。春の宵の匂いがした。
書きだしの一行。これだけで私を引きずり込んだ魅惑の文章でしたね。
筆者は京都の春の匂いは、湿った花の香りにも似た、心もとない青さ。だという。
次々と繰り出される魔法のことば。
これから読み進めることに対して震えるくらい心躍るのを意識していました。
そこには原田マハ独特の美術への耽美がぎっしりと詰まっていたのです。
浅葱色、梅鼠・・、着物特有の色表現だったり、排他的と言われる京都のしきたり風土も視点を変えると
しっとりと心に入り込んできたし、絵画の鑑賞説明ときたらまさに絵を見ているかのようなイメージがわきました。
キャストは有吉美術館の一人娘菜穂で福島の原発事故を境に東京から京都へ避難していたという設定。
お腹には夫であるたかむら画廊専務、一輝との子供を宿しています。
書きだしの主語は一輝ではあるけれど、主役は間違いなく菜穂。
菜穂の美術を見抜く感性は両親とは違い、祖父の審美眼を引き継いでいたという。
これはラストの出生の秘密へとつながるのでしたが、この件に関しては違和感なく自然に受け止められるのでした。
それは祖父こそが実の父親だったという驚くような事実。
血は争えないというけれど、祖父の息子(菜穂の養父)は全く美術の目がなかったというのが残念でもあり
だからこそ菜穂の感性の鋭さが生きてくるのでした。
物語を貫く作品にモネの「睡蓮」があります。
シリーズの一つということですが私が知ってるのは1つだけだわ・・あれ?
それを所蔵し朝に夕に自分のモノとしてDNAにすりこませ菜穂の才能を開花させるというエスパー的な小道具使いも良いわ。
この「睡蓮」は後に一樹のたくらみで売却となるわけですが、
嘆く菜穂に面倒をみてくれている鷹野せんという書道の師からもともと「あんさんのモノではない」と説かれるのでした。
絵画を所蔵するというのは一時的に独占できても、それは所有ではなく所蔵である。
永遠に誰のモノにもならないという傑作をこの世に残した画家を称える意味をせんに言わしめたところに
この書の奥深さがあります。
鷹野せんという人物はまさに京都を背負ったようなしとやかな貫録を漂わせてもう一つの柱に感じました。
他者を拒絶する京都の門も鷹野せんのおかげで次々と菜穂の前の扉は開かれてきたのでしたねえ。
そして白根樹との出会い。
青葉の絵に魅了された菜穂は心惹かれていくうちに彼女の描く「睡蓮」の絵に息をのんだという。
二人の交流は不思議な糸をたぐり寄せ、静かに流れていきます。
才能が才能を呼ぶというのはそういうことなのかもしれません。
そして最後に明らかになりますが二人は姉妹だったという運命でした。
この件は、たぶん賛否分かれる結末ではありますけどね。
わがままに育ったお嬢様と表現される菜穂ですが
自分の感性を信じてその一点だけで成長し突き進むのが快哉であり、
更にいうなら羨望でもあるわけです。
美術の感性という才能は努力で手にはいるのか? といったら否。DNAとしか思えないですよね。
その環境で日常を過ごせば少しずつ血肉に取り込まれる可能性はあるでしょうけれど
やはり、生まれ持ったモノが華開くのだと思うのです。
俗物な志村昭山画家と白根樹の悲しい親子や、養母克子と一輝の不埒な関係など
脇をかすめるストーリーはちょっと嘆かわしいものがあるんですね。
だからこそ菜穂の気高さや美術への審美眼という芯を走る構成が光るという技となっています。
美術眼を持つ祖父(=実父)と祇園の芸妓真樹乃の子が菜穂。
画家多川鳳声と真樹乃の子が白根樹。
互いの存在を知らない異父姉妹二人が絵画を通じて惹かれ、出会うのが運命というもの。
裏切りの一輝は菜穂から見限られ、
菜穂は子供を京都で育てる決心をしました。
白根樹とともに。
生まれた子供は女の子。
ゾクゾクとしますね。
この子は白根樹や菜穂の美への探求を受け継いだ凄い子に違いないのです。
二人から英才教育を受けて、どんな鋭い眼を発揮するのでしょうか。
天賦の才能を秘めたこの子を育てる続編をぜひぜひ願います!!
12/11/2009 サヨナライツカ (辻仁成)
先日、別の映画の予告でこの小説が映画になることを知りました。
別の映画とは「2012」ですがこれもなかなか迫力があり面白かったですよ。
一言で言えば現代版ノアの箱舟ですね。
10億ユーロだったっけ?持ってるわけないじゃん。
で、この時の予告で中山美穂ちゃんが魅惑的に登場していて
相手役が西島秀俊だったのでしたが
すんごくぴったりはまっていたので
実は辻さんの本は読んだことなかったけれどさっそくこの本を手にいれましたわ。
考えてみたら「冷静と情熱のあいだ」という映画は見たことがあるのよね。
で、映画と言ったら来月公開だそうですが
昨年から韓国映画ということで予告があったらしいのですね。
キャストも言語も全て日本のものですが
韓国のイ・ジェハン監督の作品なので韓国映画なんだそうです。
***
小説を読んだ一番の感想は「読みにくい文章に悩まされた」ということでした><
軽くあらすじですが時代は1975年だそうで今から34年前!
気の遠くなりそうな昔みたいですが、読んでみるとわかりますけど
そんなに古くないです。
場所はタイのバンコクの由緒あるオリエンタルホテルということになります。
サマーセットモームが愛した部屋を借りている沓子と
航空会社のエリートビジネスマン?の豊が出会うというお話です。
豊には日本にいる光子という婚約者がありまもなく結婚することになるという時期ですが、
沓子は離婚したばかりで大層な慰謝料を持っていたという設定でした。
二人は、激しく愛し合うわけですが
豊は沓子に愛しているとは決して言わずに
やがて光子と結婚してしまうのでした。
しかしこの4ヶ月間の二人の愛で魂がすっかり抜けてしまった豊は
それからの月日はオマケのような人生。
それでも家庭では子供が2人生まれ、会社でも順調に出世して副社長まで上り詰めています。
25年後の沓子はあのタイのホテルでマネージャをしていました。
そこで再会する二人ですが
変わらぬ美しさを持つ沓子をやはり愛していた豊でした。
やがて沓子の病気を知ることになり、日本からわざわざタイの病院までお見舞いにいく豊。
沓子のこれまでの人生を聞き、切なく過ぎた日を振り返るのでした。
サヨナライツカという詩を光子が送ってくれたことがありますが
光子は光子でしっとりしたいい奥さんであったことは間違いありません。
でも沓子を知った以上、沓子への愛が深く深く潜行していた豊でした。
あなたは死ぬとき愛されたことと愛したことどちらを思い出しますか?
小説の主題はここにありました。
最初、愛されたことだと応えた沓子でしたが
豊と愛し合ううちに愛したことを思い出すだろうと確信していきます。
そして25年後の再会でも同じことをいう沓子でした。
「私は死ぬとき、きっと愛したことを思い出すわ。」
******
文章が硬くて読みにくくて閉口しましたが
登場人物のキャラは魅力的に描かれていました。
なんというか、あの沓子という女性は男性からしたら
それこそ魔性そのものでしょうから
一度そのトリコになったら二度と抜けられないそんな凄い魔力を持っています。
それでも豊はぎりぎりのところで踏みとどまり
光子と結婚してしまいました。
人生を棒にふり愛を貫くかどうかで迷った豊でしたが
結果として「好青年」の呼び名通りに正しいと信じた道を選びました。
だけど一度きりの人生を振り返って
愛を遠くにおいてきた豊は抜け殻の人生を送ったことになります。
再会してそれが正しかったのかどうか再びゆらいでしまうのでした。
沓子は亡くなりますが
豊を愛しぬいたことは決して後悔せず、
死の間際にはあの4ヶ月の日々が脳裏を回っていたことでしょう。
沓子も幸せな人生だったに違いないのです。
しかし、この魅惑の女性役に辻さんの奥さんである美穂ちゃんが挑戦するとは!!
この小説を書くときにモデルとして描いたのでしょうかね?
映画を正視できるのか、他人事ながらちょっと興味津々だったりします。
そして映画も楽しみにしています。
25年後60歳過ぎのところまで描くのでしょうか。
美穂ちゃんの体当たり演技に注目でもあります。
一言で言えば現代版ノアの箱舟ですね。
10億ユーロだったっけ?持ってるわけないじゃん。
で、この時の予告で中山美穂ちゃんが魅惑的に登場していて
相手役が西島秀俊だったのでしたが
すんごくぴったりはまっていたので
実は辻さんの本は読んだことなかったけれどさっそくこの本を手にいれましたわ。
考えてみたら「冷静と情熱のあいだ」という映画は見たことがあるのよね。
で、映画と言ったら来月公開だそうですが
昨年から韓国映画ということで予告があったらしいのですね。
キャストも言語も全て日本のものですが
韓国のイ・ジェハン監督の作品なので韓国映画なんだそうです。
***
小説を読んだ一番の感想は「読みにくい文章に悩まされた」ということでした><
軽くあらすじですが時代は1975年だそうで今から34年前!
気の遠くなりそうな昔みたいですが、読んでみるとわかりますけど
そんなに古くないです。
場所はタイのバンコクの由緒あるオリエンタルホテルということになります。
サマーセットモームが愛した部屋を借りている沓子と
航空会社のエリートビジネスマン?の豊が出会うというお話です。
豊には日本にいる光子という婚約者がありまもなく結婚することになるという時期ですが、
沓子は離婚したばかりで大層な慰謝料を持っていたという設定でした。
二人は、激しく愛し合うわけですが
豊は沓子に愛しているとは決して言わずに
やがて光子と結婚してしまうのでした。
しかしこの4ヶ月間の二人の愛で魂がすっかり抜けてしまった豊は
それからの月日はオマケのような人生。
それでも家庭では子供が2人生まれ、会社でも順調に出世して副社長まで上り詰めています。
25年後の沓子はあのタイのホテルでマネージャをしていました。
そこで再会する二人ですが
変わらぬ美しさを持つ沓子をやはり愛していた豊でした。
やがて沓子の病気を知ることになり、日本からわざわざタイの病院までお見舞いにいく豊。
沓子のこれまでの人生を聞き、切なく過ぎた日を振り返るのでした。
サヨナライツカという詩を光子が送ってくれたことがありますが
光子は光子でしっとりしたいい奥さんであったことは間違いありません。
でも沓子を知った以上、沓子への愛が深く深く潜行していた豊でした。
あなたは死ぬとき愛されたことと愛したことどちらを思い出しますか?
小説の主題はここにありました。
最初、愛されたことだと応えた沓子でしたが
豊と愛し合ううちに愛したことを思い出すだろうと確信していきます。
そして25年後の再会でも同じことをいう沓子でした。
「私は死ぬとき、きっと愛したことを思い出すわ。」
******
文章が硬くて読みにくくて閉口しましたが
登場人物のキャラは魅力的に描かれていました。
なんというか、あの沓子という女性は男性からしたら
それこそ魔性そのものでしょうから
一度そのトリコになったら二度と抜けられないそんな凄い魔力を持っています。
それでも豊はぎりぎりのところで踏みとどまり
光子と結婚してしまいました。
人生を棒にふり愛を貫くかどうかで迷った豊でしたが
結果として「好青年」の呼び名通りに正しいと信じた道を選びました。
だけど一度きりの人生を振り返って
愛を遠くにおいてきた豊は抜け殻の人生を送ったことになります。
再会してそれが正しかったのかどうか再びゆらいでしまうのでした。
沓子は亡くなりますが
豊を愛しぬいたことは決して後悔せず、
死の間際にはあの4ヶ月の日々が脳裏を回っていたことでしょう。
沓子も幸せな人生だったに違いないのです。
しかし、この魅惑の女性役に辻さんの奥さんである美穂ちゃんが挑戦するとは!!
この小説を書くときにモデルとして描いたのでしょうかね?
映画を正視できるのか、他人事ながらちょっと興味津々だったりします。
そして映画も楽しみにしています。
25年後60歳過ぎのところまで描くのでしょうか。
美穂ちゃんの体当たり演技に注目でもあります。
05/31/2009 名もなき毒 (宮部みゆき)
今日は朝早くから区のイベントに参加してきました~。
なかなか終わらなくて途中で帰れず焦りました。
午後からは仕事がつまっていてつかの間の休憩15分(笑
日曜日なのにね^^;
実はタイトルの「名もなき毒」を一気読みしちゃいました~。
やっぱり宮部さんは天才。
この本は3年前のハードカバーですが、この度、文庫サイズで登場。
以前「誰か」をUPしたことがありますが、これはいわばその続編。
さらにパワーアップしてはるかに面白いです。
殺人の毒だけじゃなく、人間の持つ「毒」にかなりめまいがします。
トラブルメーカーというの聞いたことあります?
どの会社にも一人ぐらいはいますよね、こういう人。
かといって簡単に辞めてもらうこともできず扱いにこまるんですけど
親が可哀想でした。一番の感想はそれです。
今多コンツェルンの総帥の娘の婿。
いわば逆玉の杉村三郎の探偵物語ですが今回も大活躍。でした。
シリーズにしてもいいですよね。
三部作にすると以前書いていたような気がしますんで
もう一回ぐらいは出るかもしれません。楽しみにしてます。
今日は時間が押してるので簡単日記ということで^^
今夜のビフォーアフターは過去のリフォーム家の訪問みたいでしたね。
それはそれで楽しみです。
午後からは仕事がつまっていてつかの間の休憩15分(笑
日曜日なのにね^^;
実はタイトルの「名もなき毒」を一気読みしちゃいました~。
やっぱり宮部さんは天才。
この本は3年前のハードカバーですが、この度、文庫サイズで登場。
以前「誰か」をUPしたことがありますが、これはいわばその続編。
さらにパワーアップしてはるかに面白いです。
殺人の毒だけじゃなく、人間の持つ「毒」にかなりめまいがします。
トラブルメーカーというの聞いたことあります?
どの会社にも一人ぐらいはいますよね、こういう人。
かといって簡単に辞めてもらうこともできず扱いにこまるんですけど
親が可哀想でした。一番の感想はそれです。
今多コンツェルンの総帥の娘の婿。
いわば逆玉の杉村三郎の探偵物語ですが今回も大活躍。でした。
シリーズにしてもいいですよね。
三部作にすると以前書いていたような気がしますんで
もう一回ぐらいは出るかもしれません。楽しみにしてます。
今日は時間が押してるので簡単日記ということで^^
今夜のビフォーアフターは過去のリフォーム家の訪問みたいでしたね。
それはそれで楽しみです。
10/01/2008 さまよう刃 (東野圭吾著)
この本は2ヶ月ぐらい前に読みました。
ここ数ヶ月やや現実逃避癖がついてしまい、こういう本ばっかり読むようになっていましたが、
読んだ本自体は何年も前に発行されたものばかりで、
文庫本になって出ている新書を買って来ています。
いつか書こう書こうと・・随分たまってしまいました。
その中の一冊ですがまもなく東野圭吾の「流星の絆」がドラマ化されるので
同じ作者ということでちょっと紹介。
内容はとっくに忘れてしまっていますがあのときの怒りや悔しい感情は今でもよみがえります。
この本が書かれたのはあの少年犯罪事件があったころですね?
おそらくあれが契機になったかヒントを得たかという印象があります。
ちょっと復習がてらパラパラ見てみました。以下、ほぼネタバレ。
主役は娘を殺された父親@長峰。
最初は3人のカタカナ文字の少年がでてきます。
そして長峰の娘@絵摩が花火に浴衣を着て出て行く様があざやかに見え、
やがてこの子が少年たちによって被害者となっていく描写となります。
とても書きたくないシーン。これは未読の方でしたら実際に読まれるといいでしょう。
女の子を持つということはとっても心配だということにつきます。
自分の見える範囲から決してどこにもやりたくない、そんな気持ちになってしまいます。
そして、長峰はある匿名の電話により、警察より一足早く娘の被害状況を知ります。
忍び込んだ家でビデオを見つけ脳が破裂しそうな思いでしっかりと記憶に焼付け、
そして復讐へと向かうことになるのです。
それは犯人が少年だから。
現行の少年法では、娘や被害者家族が納得できる裁きは得られないことを知っているから。
この忍び込んだ家に、戻ってきた犯人の一人を怒りでいっぱいになった長峰は条件反射のごとく
衝動的にすぐに殺してしまいます。
何度も何度もめった刺しにし、急所を切り落としています。そして悟ってしまうのです。
「殺したところで、死体を切り刻んだところで娘を奪われた恨みの一万分の一も晴れなかった。
悲しみが和らぐこともなかった。
生かして反省させれば少しでもそれが果たせるのか。こんな人間の屑どもが反省などするものか。
・・・中略・・・
犯人への復讐を果たしたところで救われないことはわかっている。何も解決せず、明日も見えてこない。
だからといって果たさなければより辛い苦悶の日々が待っている。
地獄のような人生が死ぬまで続くにすぎない。
愛する者を理不尽に奪われた人間にはどこにも光はないのだ。」
こうして復讐の道を歩み始める長峰。
少年犯罪がこのような酷い犯罪だった場合、加害者が反省することなどないのは
あの事件からも過去の例からも明白です。
生まれ持ったその資質そのものが犯罪へと向かわせる、そういうものなんでしょう。
反省とか更正とか無縁の気質なのです。
なぜ法律が臨機応変に機能しないのか?
おそらく作者の狙いはここにあるのでしょう。
長峰は逃げも隠れもせず宣戦布告をします。
警察は感情の上では長峰に本懐を遂げてもらいたい。
しかし、組織としては犯人を守る立場にある。
この矛盾をつくというのもなかなかの手腕です。
マスコミの興味本位な取り上げ方。ニュース番組の無難なまとめ方。
マスコミこそ正しい報道を心がける必要があると無言で訴えています。
殺害した少年が死ぬ前に残した言葉により主犯の居場所を求めて長峰は動きます。
長野のペンション。
ここにいた和佳子の存在がひとつの読者代表のような形でしょうか。
この二人の交流が荒涼とした長峰の中では多少なりとも救いの存在だったことでしょう。
そして主犯の少年をこの手でしとめるはずの瞬間を、
警察の手によって長峰は永久に奪い取られてしまいました。
少年犯罪ほど悔しいものがこの世にあるはずがないのです。
恐らく犯人たちは犯罪を犯すだけの存在として生まれてきたのではないかと思うくらいの
そういう生まれながらにして犯罪者というのはあるんだろうと思うのです。
そういう野獣はもう人間世界に混じってはいけないのではないかというくらいの存在です。
しかし、少年であるということで守られてしまうこの矛盾。
そして長峰の刃は今もさまよっているのです。
復讐など意味をなさないと言いたいのでしょうか。
否です。
遺族に復讐が許される事は今後もないのです。
だからこそ長峰のこの悔しさを読者は知らないといけない。
少年法の壁が立ちはだかるかぎり遺族が平穏な日を迎えられる事はないということ。
犯罪にもさまざまなケースがあり、
真に裁かれるべき者を的確に裁く法を決断するときなのです。
そして、数ヶ月前、あの事件の判決が出ました。
遺族の訴えや、マスコミの報道が多くの人に訴えるものがありました。
この本もその一助を担ったかもしれません。
あの時から少し変わろうとした動きが見えました。
真に裁かれる者を正しく裁くことこそが法治国家の歩むべき姿なのです。
煮えたぎるほどの悔しさを覚えながら次へ次へと心急くように
あっと言う間に読み終えてしまったこの本でした。
未読の方はぜひお読みになってください。
読んだ本自体は何年も前に発行されたものばかりで、
文庫本になって出ている新書を買って来ています。
いつか書こう書こうと・・随分たまってしまいました。
その中の一冊ですがまもなく東野圭吾の「流星の絆」がドラマ化されるので
同じ作者ということでちょっと紹介。
内容はとっくに忘れてしまっていますがあのときの怒りや悔しい感情は今でもよみがえります。
この本が書かれたのはあの少年犯罪事件があったころですね?
おそらくあれが契機になったかヒントを得たかという印象があります。
ちょっと復習がてらパラパラ見てみました。以下、ほぼネタバレ。
主役は娘を殺された父親@長峰。
最初は3人のカタカナ文字の少年がでてきます。
そして長峰の娘@絵摩が花火に浴衣を着て出て行く様があざやかに見え、
やがてこの子が少年たちによって被害者となっていく描写となります。
とても書きたくないシーン。これは未読の方でしたら実際に読まれるといいでしょう。
女の子を持つということはとっても心配だということにつきます。
自分の見える範囲から決してどこにもやりたくない、そんな気持ちになってしまいます。
そして、長峰はある匿名の電話により、警察より一足早く娘の被害状況を知ります。
忍び込んだ家でビデオを見つけ脳が破裂しそうな思いでしっかりと記憶に焼付け、
そして復讐へと向かうことになるのです。
それは犯人が少年だから。
現行の少年法では、娘や被害者家族が納得できる裁きは得られないことを知っているから。
この忍び込んだ家に、戻ってきた犯人の一人を怒りでいっぱいになった長峰は条件反射のごとく
衝動的にすぐに殺してしまいます。
何度も何度もめった刺しにし、急所を切り落としています。そして悟ってしまうのです。
「殺したところで、死体を切り刻んだところで娘を奪われた恨みの一万分の一も晴れなかった。
悲しみが和らぐこともなかった。
生かして反省させれば少しでもそれが果たせるのか。こんな人間の屑どもが反省などするものか。
・・・中略・・・
犯人への復讐を果たしたところで救われないことはわかっている。何も解決せず、明日も見えてこない。
だからといって果たさなければより辛い苦悶の日々が待っている。
地獄のような人生が死ぬまで続くにすぎない。
愛する者を理不尽に奪われた人間にはどこにも光はないのだ。」
こうして復讐の道を歩み始める長峰。
少年犯罪がこのような酷い犯罪だった場合、加害者が反省することなどないのは
あの事件からも過去の例からも明白です。
生まれ持ったその資質そのものが犯罪へと向かわせる、そういうものなんでしょう。
反省とか更正とか無縁の気質なのです。
なぜ法律が臨機応変に機能しないのか?
おそらく作者の狙いはここにあるのでしょう。
長峰は逃げも隠れもせず宣戦布告をします。
警察は感情の上では長峰に本懐を遂げてもらいたい。
しかし、組織としては犯人を守る立場にある。
この矛盾をつくというのもなかなかの手腕です。
マスコミの興味本位な取り上げ方。ニュース番組の無難なまとめ方。
マスコミこそ正しい報道を心がける必要があると無言で訴えています。
殺害した少年が死ぬ前に残した言葉により主犯の居場所を求めて長峰は動きます。
長野のペンション。
ここにいた和佳子の存在がひとつの読者代表のような形でしょうか。
この二人の交流が荒涼とした長峰の中では多少なりとも救いの存在だったことでしょう。
そして主犯の少年をこの手でしとめるはずの瞬間を、
警察の手によって長峰は永久に奪い取られてしまいました。
少年犯罪ほど悔しいものがこの世にあるはずがないのです。
恐らく犯人たちは犯罪を犯すだけの存在として生まれてきたのではないかと思うくらいの
そういう生まれながらにして犯罪者というのはあるんだろうと思うのです。
そういう野獣はもう人間世界に混じってはいけないのではないかというくらいの存在です。
しかし、少年であるということで守られてしまうこの矛盾。
そして長峰の刃は今もさまよっているのです。
復讐など意味をなさないと言いたいのでしょうか。
否です。
遺族に復讐が許される事は今後もないのです。
だからこそ長峰のこの悔しさを読者は知らないといけない。
少年法の壁が立ちはだかるかぎり遺族が平穏な日を迎えられる事はないということ。
犯罪にもさまざまなケースがあり、
真に裁かれるべき者を的確に裁く法を決断するときなのです。
そして、数ヶ月前、あの事件の判決が出ました。
遺族の訴えや、マスコミの報道が多くの人に訴えるものがありました。
この本もその一助を担ったかもしれません。
あの時から少し変わろうとした動きが見えました。
真に裁かれる者を正しく裁くことこそが法治国家の歩むべき姿なのです。
煮えたぎるほどの悔しさを覚えながら次へ次へと心急くように
あっと言う間に読み終えてしまったこの本でした。
未読の方はぜひお読みになってください。
03/30/2008 秋の森の奇跡 (林真理子)
林真理子は好きな作家ですが、小説というよりは内容に興味を持ちました。
というのは先日の「脳ミステリー」の延長なんです。
というのは先日の「脳ミステリー」の延長なんです。
目下の興味は介護とかアルツハイマーとか、
とにかく今度お友達に会うまでにある程度、知識を仕入れておこうと思って。
誰にでもいずれ両親の問題がでてくるでしょうし。
で、この本ですが読みやすくて介護が入ってる小説でヒットしたんですよ(笑
さっそくブックオフに直行。ありました。
ハードカバーで綺麗でしたけど105円だったのよ、古いから?一気読み。
語り手は42歳の日下裕子。
この人が不倫恋愛と母親の認知症の問題に直面していく物語。
カバーには
「人生は少しずつ秋へと向かう。それでも魂が触れ合うような奇跡の恋は生まれるのだろうか」
奇跡の恋とか魂のふれあいとか、恋愛を至上主義の見方で貫いていますが
裕子は家庭を持ってるんですよ。なんじゃこりゃ。
林真理子は登場人物を人生の勝ち組というかセレブとかそういった設定にするのね。
夫は有名私立中高一貫校の教師。まずは開成とかそこらへんをイメージしたらいいのかも。
子供は有名女子大の付属小学校。日本女子大がモデルだと思う。
建築学科の学生が早稲田の建築の学生と結婚する確率が異常に高いというから。(笑
そういう裕子もその女子大出身で、インテリアショップの店長という役どころです。
ブランド品のオンパレードできらきらするカタカナに目がくらくらです。
そのまま、テレビドラマに持ってきたら絵になるわね。
う~ん・・40代の恋?本気の恋なら別にいいんですけど、不倫でしょう?
女は一生恋する乙女で・・という主義は変わらないつもりですが、
ちょっとね現実にこういうことをするのかと思うといやだなあ~と思ってしまうのは
人間として未熟だからなのかね。ま、未知の世界だしね。
最初の恋は一方的な押せ押せに乗ってしまった末の恋。
この恋が消えたのは相手の男が不誠実だったせいでした。
他の同じような奥さんにも手をだしていたことを知ったから。
次の恋が、製薬会社の総務部次長という肩書きの人物。
製薬会社というのがミソです。何しろ裕子には認知症の母がいますから。
この会社が認知症の薬を出してるという設定になっています。
ファイザーなのかな(?
社長室の応接セットを買いに裕子のショップを訪れました。
そこが出会いです。
この時に350万のソファセットというのが出てきますが、
そういうのを普通に扱う高級ショップという設定なんですね。
ま、この次長@新井という人物は先の男よりはるかに誠実な事は確かです。
そういえば聖路加病院の近くのフレンチレストランで食事をするシーンがでますが、
その店、知ってます。常連ではないですけど。
なので、ちょっとした親近感が新井に対して芽生えますね(笑
で、母の認知症発症です。
兄一家と二世帯住宅にしてほぼ行き来のない状態の一人暮らしの母。
しかし、義姉がいうには言動や様子がおかしくなっていてついにお漏らししたという。
ところが裕子が電話すると全く微塵にも感じさせないというわけでなかなか信じられない。
思い切って訪ねてみたら異物を踏んでしまったということで現実を知ることになる。
そういうものなの?
お漏らしならともかくええ??と思うのですが・・・本当にそういう症状がでるの?
読み物だから大げさに作ったというわけでもないのね?
脳の中が壊れていくというか何かが起こっているのはわかるけど
どうしても受け入れられないという裕子の気持ちでした。
今は他人事だと思って読んでますが、これはいずれやってくる現実かもしれないのです。
とんでもなく恐怖に陥りました。
アルツハイマーといったら「私の頭の中の消しゴム」を思い出しますが
あの主役の女性は綺麗でしたし、現実のひどい症状を見せることもなく幕をおろしたので
想像だけの悲惨さがあるだけでした。
で、母をどうするかという策としては、施設入所を強く主張する兄一家と
可能な限り自宅で面倒みたいという裕子のあがきで進行します。
そして薬ですが、初期の段階で服用することで進行を抑えられ日常生活を滞りなく送れるという
レベルの薬だったようですが、それでも少しずつ進行することは否めないようです。
突然の電話が入りますが、それは外出した母が家に帰れなくなったというもの。
携帯の1番を押すと裕子につながるということをかろうじて覚えていたので裕子に助けを求めた母。
周りの景色や文字でどこなのかを判断しようとしますが母にはそれに応える能力がない。
それで誰でもいいから親切そうな人に携帯を渡すように頼む裕子。
とっさに他人の手を借りて判断するという機転には勉強になりました。
本当に親切な人だったようで渋谷に行った母が原宿にいたことがわかります。
すぐに迎えにいくからと待ち合わせを頼む裕子でした。
携帯を持っていたというのが本当に良かったですが、よく聞く徘徊とも違うし、
帰れなくなったら交番に駆け込むとかするんでしょうか?現実には・・・。
怖いですね。一時も目が離せないというか・・・
こういう症状が出て、子供に手がかかる義姉は疲れきってしまうわけで
施設入所ということがほぼ決定してしまいます。
それには母も意志のはっきりするときと曖昧なときが混在するようで
自分の気持ちとしてもきっぱりと施設にはいると言い切っていました。
裕子だけがいつまでもこだわっていたのでした。
施設入所。この小説の中の施設は6畳でひと月28万という設定でした。
その費用の捻出は亡くなった父の残した遺産と母の年金と足りない分を兄一家が出すということで
この先、何年かかるか分からない費用です。
自分たちの生活とは別に月々いくらか発生するわけで
月28万は妥当なのかどうか?
実はエリの森にも介護施設があります。
ホテルかと見まがうきらびやかさで何なのか最初わからなかったのですが、
いわゆる老人ホームでした。調べてみたら介護が必要なケースだと
ひと月部屋代約50万~+食事やら介護などが35万~という施設でした。
高級外車が並ぶエントランスですからね。
高名なかたのご母堂様とか入所なすってんでしょうね。
入居時に数億ぐらいは払うのでしょうね。
(***この部分、調べて後で訂正しています)
ま、これは特殊だとしても
公共の介護施設だとどのくらいなんでしょうかねえ?
それがわかればもうちょっと安心できるかもしれませんね。
裕子の恋の進展と母の症状の進行は比例していきます。
雨の日、新井と会っていた裕子は娘からの連絡で母の徘徊を知ります。
そうそう、裕子はどうしても施設入所に対して抵抗し、ついには家を出て実家の母と一緒に
暮らし始めたばかりでした。娘も連れていきますが夫は置き去りです。
そういう状況で、娘がクラブで帰宅が遅くなり、家政婦が買い物に外にでて、
一人になったとたんに家を出て行方が分からなくなったという母でした。
発見されたものの肺炎を起こしてしまいます。
目覚めた母はとうとう裕子すら分からなくなっていたという急展開になっていました。
「あなた、どなたですか?」
相当なショックを受けた裕子でした。
ここから施設直行という事は避けられない事となっていきます。
今は年金程度で入れるところがいっぱいあるというセリフがあったので
前述の施設よりは多少お安いところを見つけたということでしょうね。
その後にこの施設を訪れると「ご親切にありがとうございます」と母に言われる裕子なのです。
ラストは、新井との恋をそのまま進行させるという二人の誓いみたいなもので
終わっています。
認知症に関しての描写は正しいのかどうかはわからないけど
こういう進行をするのだということが少し理解できたというところです。
それと対策の仕方でも、施設にはいる前段階のレベルだと、家政婦派遣も公的援助が
つくかどうかで大きく生活を左右しそう。
裕子には店長という仕事があったので家政婦との連携というか綱渡りのスケジュールですね。
でも仕事をしていなくても四六時中ついているのは本当に不可能というか
共倒れというのはよくわかります。
だからこそ、ほんの1~2Hでも誰かの手を借りるというのは大切かもしれないです。
そのための援助があるのかどうか、モデルケースなどあれば見てみたいですね。
恋に関しては、これは不倫ですからね・・・
夫も過去に何かあったという設定なので対抗するように
自分も不倫をというところもあるんでしょうが
子供がいてそういう気になるんでしょうか?
正直気持ち悪いと思ってしまいました。
林さんも最後をどう納めるべきかかなり迷ったんじゃないでしょうかね。
とにかく今度お友達に会うまでにある程度、知識を仕入れておこうと思って。
誰にでもいずれ両親の問題がでてくるでしょうし。
で、この本ですが読みやすくて介護が入ってる小説でヒットしたんですよ(笑
さっそくブックオフに直行。ありました。
ハードカバーで綺麗でしたけど105円だったのよ、古いから?一気読み。
語り手は42歳の日下裕子。
この人が不倫恋愛と母親の認知症の問題に直面していく物語。
カバーには
「人生は少しずつ秋へと向かう。それでも魂が触れ合うような奇跡の恋は生まれるのだろうか」
奇跡の恋とか魂のふれあいとか、恋愛を至上主義の見方で貫いていますが
裕子は家庭を持ってるんですよ。なんじゃこりゃ。
林真理子は登場人物を人生の勝ち組というかセレブとかそういった設定にするのね。
夫は有名私立中高一貫校の教師。まずは開成とかそこらへんをイメージしたらいいのかも。
子供は有名女子大の付属小学校。日本女子大がモデルだと思う。
建築学科の学生が早稲田の建築の学生と結婚する確率が異常に高いというから。(笑
そういう裕子もその女子大出身で、インテリアショップの店長という役どころです。
ブランド品のオンパレードできらきらするカタカナに目がくらくらです。
そのまま、テレビドラマに持ってきたら絵になるわね。
う~ん・・40代の恋?本気の恋なら別にいいんですけど、不倫でしょう?
女は一生恋する乙女で・・という主義は変わらないつもりですが、
ちょっとね現実にこういうことをするのかと思うといやだなあ~と思ってしまうのは
人間として未熟だからなのかね。ま、未知の世界だしね。
最初の恋は一方的な押せ押せに乗ってしまった末の恋。
この恋が消えたのは相手の男が不誠実だったせいでした。
他の同じような奥さんにも手をだしていたことを知ったから。
次の恋が、製薬会社の総務部次長という肩書きの人物。
製薬会社というのがミソです。何しろ裕子には認知症の母がいますから。
この会社が認知症の薬を出してるという設定になっています。
ファイザーなのかな(?
社長室の応接セットを買いに裕子のショップを訪れました。
そこが出会いです。
この時に350万のソファセットというのが出てきますが、
そういうのを普通に扱う高級ショップという設定なんですね。
ま、この次長@新井という人物は先の男よりはるかに誠実な事は確かです。
そういえば聖路加病院の近くのフレンチレストランで食事をするシーンがでますが、
その店、知ってます。常連ではないですけど。
なので、ちょっとした親近感が新井に対して芽生えますね(笑
で、母の認知症発症です。
兄一家と二世帯住宅にしてほぼ行き来のない状態の一人暮らしの母。
しかし、義姉がいうには言動や様子がおかしくなっていてついにお漏らししたという。
ところが裕子が電話すると全く微塵にも感じさせないというわけでなかなか信じられない。
思い切って訪ねてみたら異物を踏んでしまったということで現実を知ることになる。
そういうものなの?
お漏らしならともかくええ??と思うのですが・・・本当にそういう症状がでるの?
読み物だから大げさに作ったというわけでもないのね?
脳の中が壊れていくというか何かが起こっているのはわかるけど
どうしても受け入れられないという裕子の気持ちでした。
今は他人事だと思って読んでますが、これはいずれやってくる現実かもしれないのです。
とんでもなく恐怖に陥りました。
アルツハイマーといったら「私の頭の中の消しゴム」を思い出しますが
あの主役の女性は綺麗でしたし、現実のひどい症状を見せることもなく幕をおろしたので
想像だけの悲惨さがあるだけでした。
で、母をどうするかという策としては、施設入所を強く主張する兄一家と
可能な限り自宅で面倒みたいという裕子のあがきで進行します。
そして薬ですが、初期の段階で服用することで進行を抑えられ日常生活を滞りなく送れるという
レベルの薬だったようですが、それでも少しずつ進行することは否めないようです。
突然の電話が入りますが、それは外出した母が家に帰れなくなったというもの。
携帯の1番を押すと裕子につながるということをかろうじて覚えていたので裕子に助けを求めた母。
周りの景色や文字でどこなのかを判断しようとしますが母にはそれに応える能力がない。
それで誰でもいいから親切そうな人に携帯を渡すように頼む裕子。
とっさに他人の手を借りて判断するという機転には勉強になりました。
本当に親切な人だったようで渋谷に行った母が原宿にいたことがわかります。
すぐに迎えにいくからと待ち合わせを頼む裕子でした。
携帯を持っていたというのが本当に良かったですが、よく聞く徘徊とも違うし、
帰れなくなったら交番に駆け込むとかするんでしょうか?現実には・・・。
怖いですね。一時も目が離せないというか・・・
こういう症状が出て、子供に手がかかる義姉は疲れきってしまうわけで
施設入所ということがほぼ決定してしまいます。
それには母も意志のはっきりするときと曖昧なときが混在するようで
自分の気持ちとしてもきっぱりと施設にはいると言い切っていました。
裕子だけがいつまでもこだわっていたのでした。
施設入所。この小説の中の施設は6畳でひと月28万という設定でした。
その費用の捻出は亡くなった父の残した遺産と母の年金と足りない分を兄一家が出すということで
この先、何年かかるか分からない費用です。
自分たちの生活とは別に月々いくらか発生するわけで
月28万は妥当なのかどうか?
実はエリの森にも介護施設があります。
ホテルかと見まがうきらびやかさで何なのか最初わからなかったのですが、
いわゆる老人ホームでした。調べてみたら介護が必要なケースだと
ひと月部屋代約50万~+食事やら介護などが35万~という施設でした。
高級外車が並ぶエントランスですからね。
高名なかたのご母堂様とか入所なすってんでしょうね。
入居時に数億ぐらいは払うのでしょうね。
(***この部分、調べて後で訂正しています)
ま、これは特殊だとしても
公共の介護施設だとどのくらいなんでしょうかねえ?
それがわかればもうちょっと安心できるかもしれませんね。
裕子の恋の進展と母の症状の進行は比例していきます。
雨の日、新井と会っていた裕子は娘からの連絡で母の徘徊を知ります。
そうそう、裕子はどうしても施設入所に対して抵抗し、ついには家を出て実家の母と一緒に
暮らし始めたばかりでした。娘も連れていきますが夫は置き去りです。
そういう状況で、娘がクラブで帰宅が遅くなり、家政婦が買い物に外にでて、
一人になったとたんに家を出て行方が分からなくなったという母でした。
発見されたものの肺炎を起こしてしまいます。
目覚めた母はとうとう裕子すら分からなくなっていたという急展開になっていました。
「あなた、どなたですか?」
相当なショックを受けた裕子でした。
ここから施設直行という事は避けられない事となっていきます。
今は年金程度で入れるところがいっぱいあるというセリフがあったので
前述の施設よりは多少お安いところを見つけたということでしょうね。
その後にこの施設を訪れると「ご親切にありがとうございます」と母に言われる裕子なのです。
ラストは、新井との恋をそのまま進行させるという二人の誓いみたいなもので
終わっています。
認知症に関しての描写は正しいのかどうかはわからないけど
こういう進行をするのだということが少し理解できたというところです。
それと対策の仕方でも、施設にはいる前段階のレベルだと、家政婦派遣も公的援助が
つくかどうかで大きく生活を左右しそう。
裕子には店長という仕事があったので家政婦との連携というか綱渡りのスケジュールですね。
でも仕事をしていなくても四六時中ついているのは本当に不可能というか
共倒れというのはよくわかります。
だからこそ、ほんの1~2Hでも誰かの手を借りるというのは大切かもしれないです。
そのための援助があるのかどうか、モデルケースなどあれば見てみたいですね。
恋に関しては、これは不倫ですからね・・・
夫も過去に何かあったという設定なので対抗するように
自分も不倫をというところもあるんでしょうが
子供がいてそういう気になるんでしょうか?
正直気持ち悪いと思ってしまいました。
林さんも最後をどう納めるべきかかなり迷ったんじゃないでしょうかね。
03/24/2008 チーム・バチスタの栄光
実はこの映画は見てないです。主演が阿部寛と竹内結子なのは本の表紙に出てるので
わかりましたが、最後までこの二人が誰の役なのかも分からないくらいでした。
世の動きから遅れています。すみませぬ><
で、旅のお供にこの本を買いました。文庫本になったので買いやすかったのと薄くて持ち運び易いと
いうただそれだけです。もちろんずっと読んでみたいと思いつつ、日々に忙殺されてなかなか
手が出なかったので、こういう時がチャンスだからなんですね。
それと「医龍」で「バチスタ」の心臓手術のこともインプットされていたのも決め手になったので(笑
語り手は田口公平です。
この人は万年講師という能力があるのかよくわからない自己紹介ですが、ポジションとしては
なかなかいいところに目をつけています。
てか、病院内で自分から上昇志向を振り捨てて自分の居場所をさっさと見つけてしまうという
手際のよさは逆に羨ましいものがあります。
医学部を卒業するときの口頭試験で簡単な問題に答えも呆れるほどの単純さ。
留年まっしぐらなはずだったけれど卒業させてくれたのが高階現病院長。
なのでこの人には一生頭があがらないという縁があります。
田口は血を見るのが苦手なために出世を早々とやめてしまったという普通のぎらぎらした野望連中と
は違う生き方を選択しています。そして誰も知らない病院内の部屋を見つけ出してきてそこを自分の
居場所として不定愁訴外来という看板を掲げました。
不定愁訴ってはっきりしない病気というか、病気とは確定できないけど本人の具合悪さの訴えみたい
なもの。各診療科でもてあました患者をこちらで面倒みるということです。別名、愚痴外来。
心療内科とちょっと似ていますね。同じなのかもしれませんがとりあえず神経科ではないです。
ほぼ一日に5人診たらいっぱいになるという一人が1H程度ただしゃべり続けるのに辛抱強く付き合う
ような診療です。訴えを聞いてもらっただけで患者のほとんどはよくなるようですね。
そういった自分のテリトリーを確保して日々をのんびりすごしている田口のもとに高階病院長じきじき
に依頼をしてくるのでした。
ここからが本題。
それはチームバチスタのオペに術中死が3例立て続けに起こったということ。この怪現象を解明して
ほしいというもの。このオペの中心になる医師は桐生ですが、実は桐生の依頼です。
読み進むに連れてわかってくるのですが、桐生はかなり高潔な医師です。
そしてオペ実績も成績もかなりいいようです。ところが最後のところで3人が死亡してしまった。
十分な技術とチームとしての完成度を併せ持つのになぜなのか?
そこにあるのは事故か医療過誤か殺人かという疑問がふつふつとわいてくるわけです。
それを解明する役目が田口にふりかかってきました。
そして一人ひとりに面談を行い、それぞれのレポートができていきます。
彼らの印象を動物に例えたり、名前の由来を聞いたりするところなどもなかなか面白いです。
また、オペも見学しています。田口自身が血のでるオペを苦手としているようでしたが、
桐生の技術には見とれるほどの魅力を覚えたようです。しかしこのオペでも患者の術中死に至るとい
う結果になってしまうのでした。目の前で患者が死んでいくというのに原因が分からない。
死亡した患者を本来なら解剖できればいいのですが家族の認可が下りないのですね。
これ以上遺体を傷つけたくないという思いがある以上それ以上強くいうことができない。
こうして、死亡原因がうやむやになってしまう。
いや、表面的にはオペに耐え切れなかったということになるんでしょう。
そしてギブアップした田口のもとに厚生省から白鳥がやってきます。
この白鳥がまたかなりの人物。本人曰く窓際官僚だそうです。田口と似ているがキャラが違う。
田口が静で穏なイメージならこちらはあくが強く、しかも精力的なイメージを抱かせます。
そしてもう一度それぞれのチームのメンバーと面談してみる。
そこからわかってきたものがあった。
この白鳥が名前の優雅さとは裏腹にまるでゴキブリや烏のような黒さを喚起させるので面白いです。
初めのうちこそ邪魔臭い相手として見てしまうのですが、
この人が登場してからの面白さはぐんぐんとページの進む速度が速くなるのでよくわかるんですね。
つまりそれだけ魅力が詰まっていたというべきでしょうか。
そして最終章。田口に白鳥から絶対にオペをさせないでほしいという電話がかかってきます。
ところが患者が予定より早く発作を起こして緊急オペをする羽目になってしまう。
どんなに田口が頑張ったところで阻止できなかった。
そして再びの「死」が訪れます。
ここに白鳥が現れ、ある提案をして死亡原因が確定。
誰の仕業か、それがわかりました。
そこから先は謝罪会見だのなんだのとお決まりの茶番劇。
だけど、それがシナリオどおりであったようでなかったり。
けっこう田口が脳みその回る人であることがはっきりします。
高階病院長が田口を卒業させてくれたのは温情だったのか?
なかなか気の利いた答えが出てきました。
別に温情でも何でもないと院長はいいます。
ちょっとぐらい知識など足りなくても実務でそんなものは補える。
卒業させることで自分も長く田口から感謝されるし大学も助かる。
田口はそこそこの医者になり世の中の幸せを少し増やしている。
私の裁量一つで誰も損もしてないし、みんなハッピー。
この部分でなかなか食えないと思った病院長が急に垣根を飛び越えて身近にきましたね。
田口はいい上司に恵まれたということなんでしょうね。
とにかく面白かったです。
映画でこの面白さが全部入り込んでいるでしょうか?
言葉遊びというか、心理戦の面白さというか。
映像になったら消えそうな気がしてなりません。
もう上映は終わったと思うけど、いつかテレビに来たら比較してみたいですね。
誰が田口なんでしょうか?
田口の魅力が全部入ってる映画だといいなあ・・・
***********************
追記
白鳥が阿部寛で田口が竹内結子だそうですね。
白鳥のキャラは確かに阿部さんだったら怪演できそう。
でも田口は男性だったのに・・・。
男性が上昇志向を振り捨ててあの人間関係を築くから面白かったのにな・・・。
どんなセリフが飛び出すのかかなり気になってきました。
世の動きから遅れています。すみませぬ><
で、旅のお供にこの本を買いました。文庫本になったので買いやすかったのと薄くて持ち運び易いと
いうただそれだけです。もちろんずっと読んでみたいと思いつつ、日々に忙殺されてなかなか
手が出なかったので、こういう時がチャンスだからなんですね。
それと「医龍」で「バチスタ」の心臓手術のこともインプットされていたのも決め手になったので(笑
語り手は田口公平です。
この人は万年講師という能力があるのかよくわからない自己紹介ですが、ポジションとしては
なかなかいいところに目をつけています。
てか、病院内で自分から上昇志向を振り捨てて自分の居場所をさっさと見つけてしまうという
手際のよさは逆に羨ましいものがあります。
医学部を卒業するときの口頭試験で簡単な問題に答えも呆れるほどの単純さ。
留年まっしぐらなはずだったけれど卒業させてくれたのが高階現病院長。
なのでこの人には一生頭があがらないという縁があります。
田口は血を見るのが苦手なために出世を早々とやめてしまったという普通のぎらぎらした野望連中と
は違う生き方を選択しています。そして誰も知らない病院内の部屋を見つけ出してきてそこを自分の
居場所として不定愁訴外来という看板を掲げました。
不定愁訴ってはっきりしない病気というか、病気とは確定できないけど本人の具合悪さの訴えみたい
なもの。各診療科でもてあました患者をこちらで面倒みるということです。別名、愚痴外来。
心療内科とちょっと似ていますね。同じなのかもしれませんがとりあえず神経科ではないです。
ほぼ一日に5人診たらいっぱいになるという一人が1H程度ただしゃべり続けるのに辛抱強く付き合う
ような診療です。訴えを聞いてもらっただけで患者のほとんどはよくなるようですね。
そういった自分のテリトリーを確保して日々をのんびりすごしている田口のもとに高階病院長じきじき
に依頼をしてくるのでした。
ここからが本題。
それはチームバチスタのオペに術中死が3例立て続けに起こったということ。この怪現象を解明して
ほしいというもの。このオペの中心になる医師は桐生ですが、実は桐生の依頼です。
読み進むに連れてわかってくるのですが、桐生はかなり高潔な医師です。
そしてオペ実績も成績もかなりいいようです。ところが最後のところで3人が死亡してしまった。
十分な技術とチームとしての完成度を併せ持つのになぜなのか?
そこにあるのは事故か医療過誤か殺人かという疑問がふつふつとわいてくるわけです。
それを解明する役目が田口にふりかかってきました。
そして一人ひとりに面談を行い、それぞれのレポートができていきます。
彼らの印象を動物に例えたり、名前の由来を聞いたりするところなどもなかなか面白いです。
また、オペも見学しています。田口自身が血のでるオペを苦手としているようでしたが、
桐生の技術には見とれるほどの魅力を覚えたようです。しかしこのオペでも患者の術中死に至るとい
う結果になってしまうのでした。目の前で患者が死んでいくというのに原因が分からない。
死亡した患者を本来なら解剖できればいいのですが家族の認可が下りないのですね。
これ以上遺体を傷つけたくないという思いがある以上それ以上強くいうことができない。
こうして、死亡原因がうやむやになってしまう。
いや、表面的にはオペに耐え切れなかったということになるんでしょう。
そしてギブアップした田口のもとに厚生省から白鳥がやってきます。
この白鳥がまたかなりの人物。本人曰く窓際官僚だそうです。田口と似ているがキャラが違う。
田口が静で穏なイメージならこちらはあくが強く、しかも精力的なイメージを抱かせます。
そしてもう一度それぞれのチームのメンバーと面談してみる。
そこからわかってきたものがあった。
この白鳥が名前の優雅さとは裏腹にまるでゴキブリや烏のような黒さを喚起させるので面白いです。
初めのうちこそ邪魔臭い相手として見てしまうのですが、
この人が登場してからの面白さはぐんぐんとページの進む速度が速くなるのでよくわかるんですね。
つまりそれだけ魅力が詰まっていたというべきでしょうか。
そして最終章。田口に白鳥から絶対にオペをさせないでほしいという電話がかかってきます。
ところが患者が予定より早く発作を起こして緊急オペをする羽目になってしまう。
どんなに田口が頑張ったところで阻止できなかった。
そして再びの「死」が訪れます。
ここに白鳥が現れ、ある提案をして死亡原因が確定。
誰の仕業か、それがわかりました。
そこから先は謝罪会見だのなんだのとお決まりの茶番劇。
だけど、それがシナリオどおりであったようでなかったり。
けっこう田口が脳みその回る人であることがはっきりします。
高階病院長が田口を卒業させてくれたのは温情だったのか?
なかなか気の利いた答えが出てきました。
別に温情でも何でもないと院長はいいます。
ちょっとぐらい知識など足りなくても実務でそんなものは補える。
卒業させることで自分も長く田口から感謝されるし大学も助かる。
田口はそこそこの医者になり世の中の幸せを少し増やしている。
私の裁量一つで誰も損もしてないし、みんなハッピー。
この部分でなかなか食えないと思った病院長が急に垣根を飛び越えて身近にきましたね。
田口はいい上司に恵まれたということなんでしょうね。
とにかく面白かったです。
映画でこの面白さが全部入り込んでいるでしょうか?
言葉遊びというか、心理戦の面白さというか。
映像になったら消えそうな気がしてなりません。
もう上映は終わったと思うけど、いつかテレビに来たら比較してみたいですね。
誰が田口なんでしょうか?
田口の魅力が全部入ってる映画だといいなあ・・・
***********************
追記
白鳥が阿部寛で田口が竹内結子だそうですね。
白鳥のキャラは確かに阿部さんだったら怪演できそう。
でも田口は男性だったのに・・・。
男性が上昇志向を振り捨ててあの人間関係を築くから面白かったのにな・・・。
どんなセリフが飛び出すのかかなり気になってきました。
02/25/2008 「誰か」 宮部みゆき
発行から4年ぐらい経ってますね。
文庫本で見つけたので即ご購入!!
「近頃、民度が、下がってきておる」・・・
こんな風に細部の端々がすっかり宮部みゆきなんですね。
ざっとあらすじですが、背表紙に書いてある部分の引用。
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの
相談を受け入れる。
亡き父についての本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生を
たどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める。
稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
この杉村三郎(35)という人物が語り手です。
この人は今多コンツェルンの会長の孫娘の夫。いわばマスオさんとか逆玉とかいう設定。
そしてこの妻・孫娘自体も愛人の子ですが、
心臓が少々弱いという設定があり、会長が非常に大事にしている孫娘です。
二人の出会いが映画館でしたが、それもまた面白いことに一人で映画を見に来ていた妻が
痴漢に遭い、それを救ったのが杉村ということでそこから手紙のやり取りが続いた後の結婚。
この杉村は、ごく普通の家庭の出身なので実家からは大反対されたようで
ほぼ勘当同様に会長の孫娘と結婚したということになります。
杉村の家庭のおっとり具合はなかなかほのぼのさせてくれます。
これからお受験体制に入る娘もいますが、「小さなスポーンおばさん」のお話を何度も
登場させるところなども子供を育てるということの醍醐味を感じさせるものです。
また、杉村のマスオさんとしての葛藤も少し出てきます。
お受験に通う娘に専属の運転手をつけたいという妻。
お受験までなら自分の給料でまかなえるが専属の運転手といったら
すでに義父の財力に頼ることが前提となるわけで、それでもおっとりと承諾する杉村。
なるほどと思ってしまいます。
事故死したのは梶田という会長お抱えの運転手。運転技術が非常に優れていたのと
とにかく口が石のように重いという美的要素を持っていたという設定です。
この梶田が自転車にぶつけられ事故死してしまい、犯人が分からないので
娘二人が自伝を出す事で犯人逮捕に結びつけるという展開となります。
それを探っていくうちに、ごく普通の家庭のように見えた梶田には犯罪の芽のような
ほんのわずかのほつれがあったこと。
姉妹の姉が記憶している出来事、また姉の結婚の話など
普通の出来事を少しずつ織り交ぜて、見えてきた過去があり、
そして事故の解決もありました。
最後の最後に、驚く事実が出てきてコレが本当にびっくりなことだったのが意外でした。
ごく普通の家庭でも、外からは見えない何かを抱えているということをつくづく感じたものです。
それにしても、父親を慕う娘二人の構図を本当に父親だけを慕っているのだと
最後まで思わせてくれていたのにどんでん返しには腰を抜かしました。
杉村の母親の描写はなかなか毒があり面白かったですね。
口にマムシを飼っているくらいの毒を乗せた言葉がぽんぽん飛び出す女傑らしい。
「男と女はね、付き合っているとそのうち品性までが似てくる。
だから相手はよく選ばなくちゃいけない」
このセリフはなかなか効きました。
タイトル「誰か」は普通の誰かに呼びかけているのですね。
誰か・・
この杉村三郎は次期でも活躍シーンがあるそうで
「名もなき毒」で再登場し、
さらにあと一作に登場する予定があるとのことで
杉村三郎の三部作が期待できるとのこと。
毒のある母親のもとで育ったにしては
杉村はかなり思慮の深い温かさを湛えているし、
温厚で控えめのごく普通のキャラでありながら
バックボーンにコンツェルン会長がいることはかなり魅力的。
全体的に地味目な印象でしたが
読み終わってみると面白かったと言い切れるものがあるのが宮部みゆきです。
「近頃、民度が、下がってきておる」・・・
こんな風に細部の端々がすっかり宮部みゆきなんですね。
ざっとあらすじですが、背表紙に書いてある部分の引用。
今多コンツェルン広報室の杉村三郎は、事故死した同社の運転手・梶田信夫の娘たちの
相談を受け入れる。
亡き父についての本を書きたいという彼女らの思いにほだされ、一見普通な梶田の人生を
たどり始めた三郎の前に、意外な情景が広がり始める。
稀代のストーリーテラーが丁寧に紡ぎだした、心揺るがすミステリー。
この杉村三郎(35)という人物が語り手です。
この人は今多コンツェルンの会長の孫娘の夫。いわばマスオさんとか逆玉とかいう設定。
そしてこの妻・孫娘自体も愛人の子ですが、
心臓が少々弱いという設定があり、会長が非常に大事にしている孫娘です。
二人の出会いが映画館でしたが、それもまた面白いことに一人で映画を見に来ていた妻が
痴漢に遭い、それを救ったのが杉村ということでそこから手紙のやり取りが続いた後の結婚。
この杉村は、ごく普通の家庭の出身なので実家からは大反対されたようで
ほぼ勘当同様に会長の孫娘と結婚したということになります。
杉村の家庭のおっとり具合はなかなかほのぼのさせてくれます。
これからお受験体制に入る娘もいますが、「小さなスポーンおばさん」のお話を何度も
登場させるところなども子供を育てるということの醍醐味を感じさせるものです。
また、杉村のマスオさんとしての葛藤も少し出てきます。
お受験に通う娘に専属の運転手をつけたいという妻。
お受験までなら自分の給料でまかなえるが専属の運転手といったら
すでに義父の財力に頼ることが前提となるわけで、それでもおっとりと承諾する杉村。
なるほどと思ってしまいます。
事故死したのは梶田という会長お抱えの運転手。運転技術が非常に優れていたのと
とにかく口が石のように重いという美的要素を持っていたという設定です。
この梶田が自転車にぶつけられ事故死してしまい、犯人が分からないので
娘二人が自伝を出す事で犯人逮捕に結びつけるという展開となります。
それを探っていくうちに、ごく普通の家庭のように見えた梶田には犯罪の芽のような
ほんのわずかのほつれがあったこと。
姉妹の姉が記憶している出来事、また姉の結婚の話など
普通の出来事を少しずつ織り交ぜて、見えてきた過去があり、
そして事故の解決もありました。
最後の最後に、驚く事実が出てきてコレが本当にびっくりなことだったのが意外でした。
ごく普通の家庭でも、外からは見えない何かを抱えているということをつくづく感じたものです。
それにしても、父親を慕う娘二人の構図を本当に父親だけを慕っているのだと
最後まで思わせてくれていたのにどんでん返しには腰を抜かしました。
杉村の母親の描写はなかなか毒があり面白かったですね。
口にマムシを飼っているくらいの毒を乗せた言葉がぽんぽん飛び出す女傑らしい。
「男と女はね、付き合っているとそのうち品性までが似てくる。
だから相手はよく選ばなくちゃいけない」
このセリフはなかなか効きました。
タイトル「誰か」は普通の誰かに呼びかけているのですね。
誰か・・
この杉村三郎は次期でも活躍シーンがあるそうで
「名もなき毒」で再登場し、
さらにあと一作に登場する予定があるとのことで
杉村三郎の三部作が期待できるとのこと。
毒のある母親のもとで育ったにしては
杉村はかなり思慮の深い温かさを湛えているし、
温厚で控えめのごく普通のキャラでありながら
バックボーンにコンツェルン会長がいることはかなり魅力的。
全体的に地味目な印象でしたが
読み終わってみると面白かったと言い切れるものがあるのが宮部みゆきです。
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