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10/02/2010 映画「悪人」
誰が悪人なのかということをじっくり見せてくれる映画なのでした。
数日前に見てきました。

途中、数分寝ちゃったし・・汗

これをミステリーだと思い違いして見たので

物足りなさを感じたわけなんです。

ストーリーはこんな感じ。

監督 李相日

妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、柄本明、樹木希林

保険外交員の女性の遺体が発見される。事件当初、捜査線上に浮かび上がったのは地元の裕福な大学生だったが、当人の供述と新たな目撃者の証言から、やがて容疑の焦点は土木作業員・清水祐一(妻夫木聡)へと絞られる。しかし警察の目を逃れ、彼は別の女性・馬込光代(深津絵里)を連れ、逃避行に及ぶ。吉田修一の同名小説を映画化した、殺人犯の青年と共に逃げる女の切ないラブストーリー。


あれれ?ラブストーリーなのか?

ラストの切なさは確かに余韻でした。

そういえば原作は何か賞を受賞したというので文学なんですかね。

ですが殺人で逃げ回るというあたりがミステリーでもいいわけで

私としてはストーリーが残念でたまらない気がしました。


この祐一という青年はおそらくどこにでもいる

気持ちの優しい心根のいい若者なわけですが

頭の悪そうなところなんかもすっかり今時の男なんですな。

そういう祐一がふとしたことで佳乃を殺害してしまう。


なぜ殺害に至ったのか?

この辺りを画面では丁寧に描いていましたけれど

佳乃を邪険にする増尾の嫌味をじっくりと浮かび上がらせ

その扱いをうけた佳乃の鬱憤は祐一に向けられるわけです。

そして佳乃からひどい謂われ様の祐一が逆上して首に手をかけるという図式です。

とすると真に悪いのは誰かというベクトルはどんどん前に遡るわけですが

でも実際に手を下したのは祐一なんですね。


さてさて、悪人っていうけれど、それはもうみんな心底に悪人の根っこをもってるわけです。

佳乃の葬式で陰口を言う親戚たちも嫌なもんですし、

祐一の祖母に変な薬を売りつけるやくざまがいの男たちなどは

モロ、悪のかたまりです。

祐一の祖母を取り囲むマスゴミも嫌悪をふりまいてくれました。

どこもかしこも悪意がうじゃうじゃし、

実にわかりやすい悪人たちなのですが

ですけれど、みな普通に上手く折り合って暮らしている。


それなのに一線を越えてしまった祐一は

彼こそが真の悪人として逮捕になるわけです。

このあたりの悪人の描き方こそが監督の骨なんですね。


小説から受ける印象と映画はしかし別のモノになったという気はしました。

本のなかの祐一はもっと鈍重そうで田舎くさく感じるのですが

さすがにこれを妻夫木が演じると

どこかオシャレさが漂って、あのどぶ臭い人間味がスマートに見えてしまう。

ここら辺が原作を映画化する上での難しさなんですかね。

で、やっぱりココでは深津さんが一番良かった。

これはもう見た人みんながこの人の持つ深みに引き寄せられてしまうようです。

あっと驚くシーンが出てきちゃうのでびっくりしますが

ま、コレはコレで・・モゴモゴ。

まさかこのシーンで女優賞取ったわけではあるまい。


あと、「出会い系」が普通にセリフから出てくるのも驚くばかり。

出会い系ってそんなに日常にゴロゴロしているもんでしょうか?

少なくとも現実には出会い系などということは無縁ですよね。

舞台が地方ならなおさら抵抗がある組織ではないかと思うのですけど

そこらへんが犯罪を起こす特殊性を意味づけるための小道具だったのでしょうかね?


最後に光代の首を絞め、

そのくせ、その手を握ろうと必死に近付く祐一。

が、警察に引き離されるという描き方に

上手さが光りました。

面白かったのかと問われればあんまり・・ということになりますが

ただ、じんわりと余韻があったことはさすがの貫禄です。


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