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突撃レビューです。「下流の宴」ってこのタイトルがとんでもなくステキな響きだと思いません?
実際に会った珠緒の印象は「ブサイクで非常識」。由美子の「下流転落」への焦りは大きくなる。由美子の言葉に傷つく珠緒だったが、沖縄で飲み屋を営む母・洋子(余貴美子)に励まされる。一方、可奈は「可能性のある男」を探して合コンを続け、健治の会社には不穏な合併の噂が。島田の講演会を聴きにいった夜、張り詰めていた感情を思わず島田にぶつけてしまう由美子。そんな中、満津枝は翔を呼び出し、意外な提案をする・・・。

日本総中流時代の話ですよね。

豊かになりモノが溢れ、人々はより高みを目指し狂奔するという頃の話です。

かつて医者の父をなくし、下流には決してながされまいという母(野際陽子)の教えを受け

必死に上流へと家庭を築いてきた由美子の戦いです。


手塩にかけて育てた息子、翔ちゃんは高校をドロップアウトし

今やアルバイト生活ですが、出会った年上の彼女、珠緒と結婚したいということで

両親のもとにつれてきます。


これがすごくゆったり面白い女性。価値観の違いというか生き方の違いなのですな~。

珠緒の自然体が私はすごく好ましかったけれどとうてい由美子には受け入れられないのでした。

曰く、育ちが悪く下品だということになります。

姉の加奈は珠緒と翔ちゃんは同じアルバイト生活で

高校中退な翔は中卒なわけだから

世間的には似た者バカップルだというわけですが

母親の息子幻想はそれを認める許容は持ち合わせていません。


1話のエピでしたけれど、珠緒の母親は

二つのバッグを選ぶときに

立派で見事なバッグよりも安い手頃なバッグを選ぶように言ったということがありました。

そのココロは

高いモノを持ちたいと思うその「見栄」のために

人の何倍も働かなきゃいけないから。

モノに縛られるのはバカらしい。

まずはそういった心理なんですね。

沖縄の熱い風土がそうさせたのでしょうか。

より高く、人よりいいモノ、いい生活を持ちたいという上昇志向が全く無いのが

もう私的に大好感。こういう見栄張らない人大好きです。

雑誌がセレブを叫べば叫ぶほどただのギャグだと笑える人が好きなんだわ~。


一方、翔の母、由美子は一流を目指すことがその人生の最大の目標なわけです。

翔の相手にはお金がなくても教養があって、しつけのしっかりしている家庭のお嬢さんを望むのでした。

だから珠緒との対面は言葉がかみ合わず

日本語が通じないということになります。

珠緒は好きな人と結婚するのに何を構える必要があるのかと素朴な疑問を呈していたのでした。


その翔ちゃんはどういう子かというと

ママの熱い支援を受け、必死にお勉強して中高一貫校に合格。

ここですっかり伸びきったゴムになってしまったというわけです。

中学合格がゴールじゃないのは当然ですが

本人はここで疲弊しきってしまった。

ようやく入った、終わった~というところに

さらにお勉強がんばれ~と、こう来たわけでもう勘弁してくれと

不登校になり高校で中退。

それからは家を出てマン喫でアルバイト生活。

すっかり由美子のいうアチラ側=下流の生活をしているところなわけ。

そしてゲームを通じて知り合ったのが珠緒なのでした。


今でこそ草食系というステキな称号がありますがまさにりっぱな草食男子の翔ちゃん。

この生きる気力のかなり淡白なことにはけっこう共感もしてしまいます。


こんな翔ちゃんをなんとかこちら側に引き戻そうと思う由美子は

母(野際)へ手紙を書き、教えを請うことになります。


実家の高崎に帰った由美子はかつて同じ長屋に住んでいた島田の講演会にいきます。

島田は「アチラ側には決して流されない」という由美子の母(野際)の声を遠くで聞き

必死に勉強して東大医学部へ進み、今では受験生のカリスマという存在となります。

幼なじみの関係である由美子と島田ですが

由美子は悩みの翔ちゃんのことをすっかり見透かされてしまいました。

島田は自分が救ってやるみたいなことを言ってましたが・・。


一方、可奈に言わせるとバカップルである翔ちゃんと珠緒。

珠緒は素直な気持ちで会ったにもかかわらず

由美子に見下されていたことに傷ついていました。

だから翔ちゃんには母親の言うように手に職はどうかと勧めてみますが

翔は自分の今の境遇に満足していてそれ以上は望まない子。

二人はケンカ状態になってしまいます。


初めてケンカしたと沖縄の母に電話する珠緒です。

ケンカを初めてしたというのに驚く母(余)ですが、

結婚は双方の両親の祝福があってこそ幸せになれるのだから

(彼の)親子の関係がおかしいのはよくないと諭します。

彼を根っこから幸せにしてあげることが珠緒の役目だと言うこの母親の素晴らしさ。

珠緒の素直なおおらかさはこの母親譲りでしょうか。

この親子は魅力的な描かれ方をしています。


こんな状態の翔のところに高崎の祖母(野際)が倒れたからきてくれという連絡。

それはウソ・・

祖母は無気力な翔を海外に行き、外国を何年か放浪して

自分の生きる目標を見つけて欲しいと預金通帳を差し出しました。

それは1000万ほど印字されてましたが

となりの由美子が驚いています。

しかし翔は無表情でその通帳を押し戻し、お金なんて要らない。

言葉もわからないような外国には行きたくないというのでした。


***


価値観の違いという面がこんなに対立するのですね~。

本当に、社会現象みたいな気がします。

いわゆるニートなんかもこんな小さなところからのほころびで

その延長上にあるのでしょうか。


由美子の描く上流の生活って結局幻想なんですよね。

昔は一流の学校を出て一流といわれる会社に入ることが上がりだったでしょうが

いつリストラがあるかわからないし、将来が見えない今、

学校も会社も何も守ってくれないことを若い人は知ってるわけです。


それ以前に翔は生きるためのエネルギーを受験で全て使ってしまったようで

上を目指すことにロクなことはないことを嫌というほど味わったわけです。

無駄なエネルギーを使わない生き方こそ今の子らしいと言えれば言えるのですね。


でも親としてはそんな翔を黙認することはできません。

つまりは親亡きあとの生きる力をなんとか身につけて欲しいわけです。

アルバイトで何とかなるのは若いからであり、

その後、病気や老いの時、この子はどうするのかと思ったらいてもたってもいられません。

見栄を張ることとは別の次元で

生きる力を取り戻してもらいたいところです。


しかし、「お金なんて要らない」という翔を

お金を稼げる人間にすることができるでしょうか?

なんか、あの無気力状態じゃ無理そうな気がします。

むしろ、由美子と会って屈辱を感じた珠緒の方が発奮しそうなそんな印象がありました。

何しろ母親からも彼氏を幸せにするのは珠緒の役目だとハッパ掛けられてるしね。

女性の方がやはり強いような気がするこのごろ。


昔の価値観で見ている人には本当に異次元の若者に映るでしょうけれど

私的にはどの登場人物にも共感できてしまう

そんな面白いドラマだと思っています。





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