澄んだ青空の向こうから、不思議な空気にのって届いた。
ああ、このふわっとした野ブタの微笑を二人に見せてあげたい。
キミ達二人のプロデュースがこんな風に実を結んだのよ。
それは暖かで、二人を包み込むようにふんわりしていて。
海と空が一つになるその向こうまで続く三人の輪が、すぐそばにあるのよと
そんな冬の陽だまりの中にそっとしのばせて。
クリスマス。いいなあ、いつもこの三人は彰の下宿に集っています。
夢の話からサンタにプレゼントを求めるのを順送りにしていますが
彰はカレーパンと言ってしまいました。平山おぢがタイミングよく持ち帰ります。
どうして野ブタも修二も自分の欲しいものを言わず順送りにしたのでしょうか。
夢の中でさえも三人が大事にという潜在意識。
わたしなら即座に引越しはなかったことに、と言いたいのに、
修二ったらそれはとっさに出てこなかったのね。
彰は自分を下の名前で呼んで欲しいと言います。
それは唐突でした。どうした彰?どこかに修二が消えてしまうと信号が
あったのでしょうか。単なる気まぐれで言い出したにしては名前に拘ります。
野ブタが早口で「彰!」と呼びますがなぜかおかしい。三人で笑い、繰り返し
野ブタの「彰!」を楽しんでいます。三人は言いたいことを、言いたいように、
心が通い合うようになったのね。屋上の風が三人の笑顔をのせて絡んできます。
けれど修二は心からさびしんぼうなまま。隙間風がピューピュー・・・と。
これ以上仲良くなるのは嫌だ。
もうすぐわかれてしまうのに仲良くなったって悲しいだけだ。
修二は別れのあとの悲しさを思うともう耐えられない状態になってしまったのね。
こんな臆病で本心は友達を求めてやまない修二の方だったのに。
笑いながら、いつその引越しを切り出そうと悩む修二でした。かわいそうに・・・。
さて彰は封印した写真を二人に見せようと糠漬けをかき回しますが
結局、そこまでの気力が消えてしまい生物28点のテストでごまかしてしまいました。
まるで告白大会のよう。野ブタもランチのお弁当突撃をやめたいと。
・・・釣られてしまった修二、とうとう引越しの話を告げていました。
ショックな野ブタさん。泣きながら走って出て行きます。追いかける彰。
残った修二は糠漬けをかき回しその写真を見つけてしまいました。
彰が封印した写真。永遠に誰も知らないはずだったのに。
そして彰が知っていたことに愕然とします。
修二は彰の深い友情を確認できた一瞬でしたが、修二の気持ちが透けて見える
くらいに悲しさと寂しさが伝わってきます。どうしよう。どうしよう・・・。
彰の気持ちがしっかりと届いた修二。けれど引越しはどうしようもないのね。
神様はこんな三人を引き離してしまうのでしょうか。
冗談からでた真でしたが清楚な怪しさをまとう野ブタさん、巫女が似合います。
神社で枝を折ってしまった木の罰があたるから二人にお札をと思うのに
どちらとも決められず「三人で罰に当たろう」
お札は河に投げてしまったのでした。びっくり。いきなり強烈な野ブタさんです。
修二は職員室でも惜しまれます。何かと餞別を貰いますが
担任の没収箱からは2のカードを。ゲームで勝とうとするのが良くないと。
例えて言うなら2で勝てるゲームもあるのだと。妙に納得してしまう修二です。
本当に良く見てたのねさすが担任、うまいわ。うまいけれど自分で言わないでよね!
そしてキャサリンからはマスコット人形でした。野ブタ人形とは違う意味での愛らしさ。
これを2つ持つと幸せになれるらしい。そうね、今は種だと微笑むキャサリンです。
しかし三人はプレゼント交換に出してしまいます。
自分の幸せより三人の誰かに二つ持ってもらいたかった。
あなた達ってここまで深く結びついてるのね。じんわりじんわりと、うるうる・・・・。
今日は全編お別れの儀式。切なくて寂しい。
野ブタさんに修二は語りだしています。
この先誰かを好きになるとしたら俺は野ブタを思い出すと思う。
全部野ブタが教えてくれたんだなと思い出すと思う。
人を好きになるってささやかでなんでもない所に転がっていたのだと気付く修二。
これまでの人を踏み込ませない、そして自分のことすら絶対に開いたことのなかった
修二にしてはなんという成長でしょうか。野ブタさんが修二を変えたのね。
こんな風に胸襟を開いて誰かと話したことだって実はなかったはず。
修二の素直な表現には思わず涙が光ってきそうです。
野ブタの登場は二人のプロデュース心をくすぐったけれど
間違いなく修二の心をも溶かすパワーも持っていたのでしたね。
ありがとう、小谷さん。 修二と私の声がハモっているようです。
そしてまり子にも最後のプレゼントを企画します。
それは海の演出をしたお弁当タイムでした。
まり子はきっとこの日を忘れないでしょう。
『今度会うときはもっとマシな人間になっているつもりだから』
うんうん、そう言えるようになったキミはまた一つ大きな壁を乗り越えたのね。
修二は学校でまり子と野ブタが仲良くしているのを見て幸せな気分になります。
ああ、これで心置きなく転校していけると確認できた瞬間でしょうか。
そして明日もあるかのように振り返らず彰とも別れました。
・・・修二は一切にすっきりと別れを告げたのです。辛かったでしょうに。
修二の引越し当日。起き上がれない彰は平山おぢから
「逃げることでそれまでの楽しいことも全部無かったことにするのか」と。
えびのように丸くなって、彰、本当に苦しかったのね。
けれど彰に一つの計画が進行していたとはこの時はまだ誰も知りませんでした。
アミーゴ高校での初日。海のそばに干しているいかがのどかな光景。
修二は、これまでの彰と野ブタで培われた気持ちをどこかに置き去りにしてきたよう
です。全く以前と変わらない修二。ゲームの人生を挫折しないようにと、
気合をこめて自らをガードするよろいをまとい、トイレから出てきます。
耳にかけた髪がかわいい。今度は学ランの制服です。
本来なら別天地で新しい修二になり自然で心を開いた友人をと願う私がいました。
しかし修二は臆病さが勝ってしまったようです。残念!
深々とお辞儀し自己紹介。
うん? あれは?
彰? 幻覚?
皆様、驚いてしまいましたね。
ラストのラストまでお別れの儀式に散々泣いたあと、こんなサプライズでした。
二人はいつでも一つ、歌のイメージでプレゼントを貰った私たちです。
なんと彰は前日にヘリで校庭に降り立ったのだとか。
相変わらず度肝をぬく、ボンボンぶりです。
でも修二にはこれからずっと彰がそばにいるのね。
寂しく着ぐるみをまとう必要がどこにも無い修二。
もう人生ゲームなど関係ないのですね。
海の中で戯れるふたりの笑顔が弾けるようにまぶしいのです。
野ブタにはまり子が、しっかりとその手をつかみ、新たな関係ができつつあります。
「私は笑えるようになったのよ」
学校の屋上から女神のような暖かな微笑を
二人に届けとばかり風にのせて送っていました。
無条件に信じられる友人を見つけた三人はいつか四人になり
この友情がいつまでも確かなものであるようにと願いながら。
ずっとずっと友達だよ。遠い昔に親しんだ絵本を思い出し、
ファンタジーのなかの主人公達は今日も何気ない友情を紡いでいるのです。
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とうとう、この日が来てしまいました。
二ヶ月間、野ブタにずんずんと沈みこみ
どっぷりつかり、若い彼等の笑顔に引きずられ毎日が幸せでした。
最後など来なければいい、いつまでも夢を見させて。
そんな願いがあったとしてもいつかは来る別れ。
この壁をどうやって乗り越えるか。このときのあり方で人間性が見えるのね。
修二も彰も、野ブタもお互いを思いやり、自分よりも相手を尊重する、
なんてステキな子達だろうと羨ましくそして嫉妬でいっぱいになりそうでした。
この人という信じられる大事な人を見つけたこの三人に心から拍手を送ります。
そして今日まで私の野ブタ物語にずっとお付き合いくださった皆様、
ありがとうございました。心からお礼を申し上げます。