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おススメ度★★★★★
アタシ好みの文体でぞっこんハマったよ~~。マハさんだけに(おっとととと
過去の仕事のせいで本を読めなくなりましたが、本屋めぐりは趣味なのでついつい手にとり「積んどく」が普通のあたし。

でも、本書を手にしたとたん、のめりこむような感覚に溺れました。ひたすら読み、そして満足しました。

それは確かな鑑賞眼との共存。以下ネタバレあります。

京都に、夜、到着したのはこれが初めてだった。春の宵の匂いがした。

書きだしの一行。これだけで私を引きずり込んだ魅惑の文章でしたね。

筆者は京都の春の匂いは、湿った花の香りにも似た、心もとない青さ。だという。

次々と繰り出される魔法のことば。

これから読み進めることに対して震えるくらい心躍るのを意識していました。

そこには原田マハ独特の美術への耽美がぎっしりと詰まっていたのです。

浅葱色、梅鼠・・、着物特有の色表現だったり、排他的と言われる京都のしきたり風土も視点を変えると

しっとりと心に入り込んできたし、絵画の鑑賞説明ときたらまさに絵を見ているかのようなイメージがわきました。

キャストは有吉美術館の一人娘菜穂で福島の原発事故を境に東京から京都へ避難していたという設定。

お腹には夫であるたかむら画廊専務、一輝との子供を宿しています。

書きだしの主語は一輝ではあるけれど、主役は間違いなく菜穂。

菜穂の美術を見抜く感性は両親とは違い、祖父の審美眼を引き継いでいたという。

これはラストの出生の秘密へとつながるのでしたが、この件に関しては違和感なく自然に受け止められるのでした。

それは祖父こそが実の父親だったという驚くような事実。

血は争えないというけれど、祖父の息子(菜穂の養父)は全く美術の目がなかったというのが残念でもあり

だからこそ菜穂の感性の鋭さが生きてくるのでした。

物語を貫く作品にモネの「睡蓮」があります。

シリーズの一つということですが私が知ってるのは1つだけだわ・・あれ?

それを所蔵し朝に夕に自分のモノとしてDNAにすりこませ菜穂の才能を開花させるというエスパー的な小道具使いも良いわ。

この「睡蓮」は後に一樹のたくらみで売却となるわけですが、

嘆く菜穂に面倒をみてくれている鷹野せんという書道の師からもともと「あんさんのモノではない」と説かれるのでした。

絵画を所蔵するというのは一時的に独占できても、それは所有ではなく所蔵である。

永遠に誰のモノにもならないという傑作をこの世に残した画家を称える意味をせんに言わしめたところに

この書の奥深さがあります。

鷹野せんという人物はまさに京都を背負ったようなしとやかな貫録を漂わせてもう一つの柱に感じました。

他者を拒絶する京都の門も鷹野せんのおかげで次々と菜穂の前の扉は開かれてきたのでしたねえ。


そして白根樹との出会い。

青葉の絵に魅了された菜穂は心惹かれていくうちに彼女の描く「睡蓮」の絵に息をのんだという。

二人の交流は不思議な糸をたぐり寄せ、静かに流れていきます。

才能が才能を呼ぶというのはそういうことなのかもしれません。

そして最後に明らかになりますが二人は姉妹だったという運命でした。

この件は、たぶん賛否分かれる結末ではありますけどね。

わがままに育ったお嬢様と表現される菜穂ですが

自分の感性を信じてその一点だけで成長し突き進むのが快哉であり、

更にいうなら羨望でもあるわけです。

美術の感性という才能は努力で手にはいるのか? といったら否。DNAとしか思えないですよね。

その環境で日常を過ごせば少しずつ血肉に取り込まれる可能性はあるでしょうけれど

やはり、生まれ持ったモノが華開くのだと思うのです。


俗物な志村昭山画家と白根樹の悲しい親子や、養母克子と一輝の不埒な関係など

脇をかすめるストーリーはちょっと嘆かわしいものがあるんですね。

だからこそ菜穂の気高さや美術への審美眼という芯を走る構成が光るという技となっています。

美術眼を持つ祖父(=実父)と祇園の芸妓真樹乃の子が菜穂。

画家多川鳳声と真樹乃の子が白根樹。

互いの存在を知らない異父姉妹二人が絵画を通じて惹かれ、出会うのが運命というもの。



裏切りの一輝は菜穂から見限られ、

菜穂は子供を京都で育てる決心をしました。

白根樹とともに。

生まれた子供は女の子。

ゾクゾクとしますね。

この子は白根樹や菜穂の美への探求を受け継いだ凄い子に違いないのです。

二人から英才教育を受けて、どんな鋭い眼を発揮するのでしょうか。

天賦の才能を秘めたこの子を育てる続編をぜひぜひ願います!!



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